2017/7/25 13:30

O.J.シンプソンが再びハリウッドで働くべきではない理由

80年代や90年代の出来事を繰り返すメディアの体質に出くわすことなく、今の時代を振り返ることはできない。ノスタルジアは大きなビジネスであり、米ケーブルテレビ局FXで放送された『アメリカン・クライム・ストーリー/O.J.シンプソン事件』がノミネートされた賞のほぼ全てを受賞するように、偉大な芸術に繋がることさえある。

しかし、有名な元プロフットボール選手だったO.J.シンプソンへの関心がいくら高まっても、彼を再びハリウッドやエンターテイメント業界で働かせるべきではない。再び働かせることを正しい判断をしたとする会社はどこにもないだろう。

たとえ仮釈放委員会がシンプソンに自由を与え、比較的早い時期にネバダ州の刑務所から釈放されるとしても、彼をエンターテイメント業界に迎え入れリアリティ番組の有名人にするというのは酷く不快な考えだ。

ニコール・ブラウンとロナルド・ゴールドマンの残忍な殺人容疑で、シンプソンが有罪かあるいは無罪なのかという問題は脇に置こう。一連の犯罪でシンプソンはネバダ州から有罪判決を受け、裁判官に最低9年の懲役を科せられた。リアリティ番組に出演する有名人の多くは波乱に富んだ過去を持っている。しかし、裁判所で12の刑事上の訴因で有罪判決を受けたことは、リアリティ番組に登場する一部の有名人やD級スターの経歴で良くあるような、お決まりのスピード違反の切符を切られたり、酒に酔ったあげくの騒ぎで逮捕されることよりも一層深刻だ。

シンプソンが2007年に起こした不快な事件の前に、私たちの中にはその1年前に起きた出来事を思い出す人もいる。2006年の後半、米テレビ局FOXは、出版されることのなかったシンプソンの著書『If I did it(もし私がやっていたとしたら)』の内容について討論する特番を放映する予定だった。この本と特番は、現代において最も悪趣味なメディアの見世物のひとつであり、米FOXの名を忘れられないものにした。特番でシンプソンは、元妻のブラウンとゴールドマンをどのように殺害したのかを述べたとされている。この企画が2人の人間の破滅と死を利用して、利益を得るために事件を明確にさせようとする類のものであることは明らかだった。

シンプソンの著書と特番の発表で米FOXが非難の嵐を受けたことは明らかだったが、そのようなことが再び起こらないという根拠はない。少なくとも、他のメディア企業はその憂鬱な光景から学び、間違いなく彼らのブランドに悪影響を与えるシンプソンにメディアの注目を浴びせることを避けることができるだろう。

知的かつ慎重に、ブラウンとゴールドマンの残酷な死によって始まる複雑な一連の出来事を探究した台本に沿った番組は、素晴らしいアイデアだった。米ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のESPNによる素晴らしいドキュメンタリー番組『O.J.:メイド・イン・アメリカ』は異なる取り組みを行い、人種、犯罪、刑罰、メディアの欠点といった問題を説得力を持って指摘するという似たような理由で複数の賞を受賞した。問題の多いロサンゼルス市警察の歴史や、有名なスポーツ選手が自身の最悪な行動によって生じる結果からしばしば守られる世の中など、この裁判では調査することが沢山ある。そういうわけで、シンプソンに関する茶番のような物語は、人を引き付けるだけでなく欠くことのできないものになってしまうのだ。

しかし、ニコール・ブラウン・シンプソンを明らかな恐怖に陥れた『O.J.:メイド・イン・アメリカ』が、身も凍るようなアメリカ同時多発テロ事件のテープを詳細な背景としていることを忘れるのは難しい。シンプソンは、彼を深く恐れていた妻を投打した。そこに疑いの余地はない。さらに贖罪の物語(これはシンプソンと彼の弁護士が公聴会で提出した偏った解釈だ)を進めようとしている人たちにとって、シンプソンが手続き中のさまざまな時点で取った好戦的な態度を無かったことにするのは難しい。過去1年または2年で、シンプソンの殺人事件でアメリカは多くのことを学んだ(または再学習した)が、シンプソン自身が過去数十年の間に何を学んだのかは甚だ明確ではない。

口先だけのリアリティ番組やイメージを回復しながら金を稼ぐ有利な手段をシンプソンに与えるのは、メディアや具体的にはエンターテイメント業界の犯す間違いの一例だ。シンプソンの新しい物語の中心と彼の視点から語られる話は、必然的に一部の人々には同情的に映るだろう。一人称の視点から見ることは強力な武器となり、番組を制作する作家たちがシンプソンの動機を取り上げ、どのような環境であっても贖罪の物語に抗う苦労をすることはないだろう。しかしその傾向は、シンプソンの過去(公聴会で主張したように、彼は暴力から解放されていなかった)の問題が行き過ぎたものだと考える人を最小限に抑え、場合によってはそれを正当化してしまう不幸な結果を呼ぶだろう。

アメリカは第二の機会を愛する国だが、 そうさせるにはあまりにも多くの不安要素がある。

もちろん、犯罪者たちは人生を再建するチャンスを得なければならない。だが、シンプソンがいつ新たな人生を歩み始めるのを許されるとしても、それがスポットライトからは程遠い場所にあることをただ祈るばかりだ。


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