2016/8/15 13:00

『ジャングル・ブック』ジョン・ファヴロー監督の仕事論 チャレンジし続ける理由とその原動力とは

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映画『アイアンマン』シリーズや映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の製作・監督・出演で知られるジョン・ファヴロー監督

8月11日(木・祝)より日本公開を迎えた最新作『ジャングル・ブック』では、主人公の人間モーグリ以外は動物や背景など全てをリアルなCGで表現するなど、常に革新的な撮影手法に挑戦している。このたび来日したファヴロー監督に話を聞く中で、その映画人としての仕事論を垣間見ることができた。

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――『ジャングル・ブック』の話の前にコレだけ伝えさせてください。監督の『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』が人生ベスト級に大好きです!

ファヴロー監督:ありがとう! 小規模な作品である『シェフ』が日本で人気だったと知って驚いたよ(笑)。

――もちろん『アイアンマン』や他の作品も好きなのですが、今作も含めて監督の作品はジャンルが多岐にわたりますよね。作品選びのポイントや基準はどんなところにあるのでしょうか?

ファヴロー監督:『ジャングル・ブック』のように外から持ち込まれた企画に携わる際は、ワクワクして夢中になれる作品、頭から離れなくなるくらい没頭できる作品でなくてはならない。自分のアイデアから企画を立ち上げた『シェフ』の場合でもそうだけど、大切なのは情熱を持ち続けられるかどうかだ。私は俳優の仕事もやっているけど、その場合は少し違う。何か学びを得るために一度チャレンジしてみよう、という考えでも良い。その点は観客も同じだ。わずかでも興味があれば、劇場に足を運んで作品を楽しんで欲しいと思う。でも監督の場合は、とにかく全身全霊を注ぐことができる作品でないとダメなんだ。

――『シェフ』のようなインディペンデント系の作品と比べると、今作のような超大作の場合、やはり監督の自由度は制限されたのでは?

ファヴロー監督:まず初めに、作品の大小と監督の自由度は必ずしも関連性があるわけではないんだ。例えば、テレビコマーシャルやテレビドラマのパイロット版なんかは、監督にほとんど自由が与えられない。『シェフ』の場合、自分の企画という意味では自由度が高かったけど、製作期間が短かったという点では苦労した。

『ジャングル・ブック』はディズニー作品であり、長編アニメーションが発表されてから50年の歴史を持つ作品だから、確かに守るべきポイントは多々あった。その一方で、ディズニーからは「新しい息吹を吹き込んで欲しい」という思いを託されていたから、脚本やキャスティングも含めて、クリエイティブの面では大部分の権限を与えられていたと思う。巨大なパズルを組み合わせるような作業が必要で、非常に自由とやりがいを感じたよ。映像テクノロジーの面は、完全に自分の理解を超えていたけどね(笑)。

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――その映像技術のことも聞かせてください。動物もジャングルもすべてがCGだなんて、言われないと気付かない人も多いと思います。その中で、主人公のモーグリだけは実写にこだわった理由は何でしょうか?

ファヴロー監督:実を言うと、もともと私はCGをそれほど信用していなかったんだ(笑)。CG技術の持っている能力以上の演技を求めることができないらね。でも、『アイアンマン』の時に光沢あるメタルの表現はキレイに描けることを学んだし、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』やリブート版の『猿の惑星』シリーズを観て動物の毛並みや細かい表情についてもしっかりと表現できることが分かった。ただし、やはり人間の表情となると、いわゆる「不気味の谷現象」と呼ばれる表現の限界を感じてしまう。これには、まだ時間がかかるだろうね。今回は本物の少年を起用したからこそ、その周りの背景や動物たちについてもリアルさを保つことができたと思うよ。

――裏を返せば、例えば『ライオンキング』のような動物しか出てこない作品をリアルな映像で描いた場合、現在のテクノロジーを駆使すれば観客は十分に感情移入できると思いますか?

ファヴロー監督:『ジャングル・ブック』以前は難しかったかもしれないけど、今ならできると思う。今作でこだわったのは、CGの映像でありながら実写の手持ちに近いカメラワークを意識したこと。だから観客は、潜在意識的に「カメラで撮影されたジャングルだ」と感じるはずだ。ライティングや毛並みの表現など他にも重要なポイントはたくさんあるけど、観客が感動できるかどうかは、カメラの動かし方ひとつで変わってくるんだ。

――最近では、クリストファー・ノーラン監督や、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の時のJ・J・エイブラムス監督など、あえてCGを使わない撮影手法にこだわりを見せる作り手もいますよね。

ファヴロー監督:彼らのことはとても尊敬しているよ。フィルムでの撮影を好む監督のことも大好きだ。(ジョージ・)ルーカスは、『スター・ウォーズ』を作った当時に、最先端の技術を用いて我々を驚かせてくれた。J・Jはその伝統を引き継ぎ、パペットを使った昔ながらの手法によって、私が子どもの頃に愛して止まなかった『スター・ウォーズ』の精神をしっかりと表現してくれたと思う。一方で、ジェームズ・キャメロンのように、常に新しい技術に挑戦するタイプの監督もいる。CGの技術を駆使した作品には、スーパーヒーローものやアクション映画、SF映画が多いから、『ジャングル・ブック』ではそのジャンルの幅を広げることができたと自負しているよ。そうした中で切磋琢磨しながら、フィルムメーカーとして映画業界に貢献できれば嬉しいな。

――『ジャングル・ブック』の続編やディズニーランドを舞台にした実写映画『マジック・キングダム』など、監督の今後の仕事についてもいろいろと耳にしております。今作のテーマのひとつには「生きる力」があると思いますが、監督にとって、仕事や生活においての原動力はなんでしょうか?

ファヴロー監督:私には3人の子どもがいて、私自身はもうすぐ50歳になる。仕事と家族、そして友人たちからは多くの刺激を受けているよ。あと、『シェフ』の製作を通して学んだことがある。料理人はとにかく集中力があり、心血を注いで卓越したものを創造する人々だ。日本の職人にもそういうタイプは多いと思う。自分の仕事に誇りとこだわりを持っている。そんな素晴らしい人が作った料理を食べることは、自身の経験としてずっと残るものだ。息子と一緒に食べた美味しい寿司は消え去るけど、その体験は心の中に残る。だから私は、何かモノを買うよりも、自分のカラダの中に残る体験を重要視している。体験は財産になるし、それが積み重なっていくのが人生だからね。

――そんな様々な体験を経た監督が作る作品を観て、多くの観客もまた貴重な体験をする、ということですね。

ファヴロー監督:そうなれば最高だよ!

――本日は貴重なお話をありがとうございました!

『ジャングル・ブック』驚異のメイキング映像(YouTube)

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